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Writer's pictureharuukjp

旅立ちと喪失 子供たちが巣立つその時、私は何を残すのか



まだ外は暗い。午前6時19分。駅に停まっていた電車は、静かに動き出し、ゆっくりとホームを離れていった。


窓越しに手を振る人々の姿が、まるで遠ざかる風景の一部のように見えた。笑顔で手を振るその光景が、なぜだか妙に心に引っかかる。私は家族の大きな荷物を電車の中まで運び入れ、その後もう一度ホームへ戻ってきた。抱き合う家族、そしてしばらくのお別れ。子供たちの姿が、私の目の前で少しずつ遠ざかっていく。


場所はチェコのプラハ。家族はこれからポーランドのクラクフへ向かう。約6時間の電車の旅だ。指定席のセカンドクラスには、頭を支えるためのクッションがついていて、少しでも快適に眠れるだろう。


電車の中の家族と、ホームに立つ私とで、互いに動画を撮り合いながら、手を大きく振って別れを告げる。電車がゆっくりと動き出す。暗闇の中を進む列車のテールライトが、視界から消えていった。


電車が去った後、私は広いプラットフォームにただ一人立ち尽くしていた。そこに静かに押し寄せてくる喪失感。駅の構内で、さっきまで娘と一緒に眺めていたレゴのおもちゃが、なぜだかとても寂しく見える。


タクシーに乗り、アパートへと戻る。静まり返った部屋の中で、ただ一人。普段は子育てに追われ、忙しい日々の中で「一人になりたい」と思うこともある。けれど、いざこうして一人になると、何かを失ったような気がして、心の中にぽっかりと穴が空いたような感覚に襲われる。


いつか、こんな日がまた訪れるのだろう。子供たちは成長し、やがて家を出ていく。私はその時、一人残されることになるのだろう。その日を迎えるために、私は自分の中で何かを準備しておかなくてはならない。そうでなければ、この喪失感に飲み込まれてしまい、時を無為に過ごすことになってしまうかもしれない。


それでも、子供たちが立派に旅立っていく姿を見ることは、何よりも嬉しいことだ。だからこそ、私自身もその未来に向けて、しっかりと生きる準備をしておかなければならないのだと思う。


文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から701日目を迎えた。(リンク⇨770日目の記事)』


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