ジャガイモ遅すぎた、完売!
- haruukjp
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4月のイギリスに、これほどまでに雲が見当たらない日が続くなんて、少し不安になるくらいだ。空は毎朝、機嫌が良すぎるほど青く澄んでいて、それはまるで、何かを隠しているかのようでもある。
普通ならこの時期、ロンドンの街角では傘が開いたり閉じたりを繰り返しているはずだ。でも、今年の春は違う。雨がまるで、しばらく家出でもしたみたいに、姿を見せない。
畑の土は硬く、私の腰も重い
庭に出ると、畑の土はすでに乾きすぎていて、まるでパンを焼きすぎた時の表面みたいにカチコチになっていた。私はスコップを手に取り、少し躊躇した。この土を掘り返すには、それなりの覚悟がいる。腰にも、それなりの負担がかかる。
春の野菜といえば、じゃがいも。本当なら3月中に種芋を植えておくべきだったけれど、日々の忙しさにかまけて、私はタイミングを逃した。
種芋、消える。そして私は車を走らせる
4月になって、ようやく植えようかという気分になった。けれど、近所のガーデンセンターを3軒まわってみたけれど、どこも「種芋、売り切れました」と書かれた紙が、申し訳なさそうに風に揺れていた。
私は思わず、車の中でつぶやいた。
「今年は、じゃがいもが食べられないのか?」
それはちょっとした絶望感だった。スーパーに行けば、いくらでも売っているくせに、私は「自分のじゃがいも」が必要だった。
救世主は、地元の小さなコミュニティショップ
最後の望みをかけて訪れたのは、地元のアロットメント(市民農園)にある、小さな店だった。そこには、不思議なほど静かで、でもどこか温かい空気が流れていた。
そして、その片隅に…あった。箱の中に、ひっそりと、でも確かに、種芋が積まれていた。
私はそれを見て、ほんの少しだけ涙が出そうになった。――今年も、じゃがいもが育てられる。
青空の下で、静かに種を植えるということ
今日も、空は晴れている。どこまでも青く、どこまでも広い。私は畑に出て、スコップを構え、少しだけ深呼吸をした。
種芋をひとつ、またひとつと土に置き、優しくその上に土をかぶせていく。まるで、それが日常の中でできる小さな祈りのようにも感じられる。
終わりに ー「種をまく」という生き方
異常気象かもしれない。世界は、少しずつ何かがずれているようにも思える。けれど私は、それでも静かに、種をまいてみる。
ジャガイモが育つ頃には、また少し雨が戻ってきてくれるかもしれない。そういう希望を、私は信じたい。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から857日目を迎えた。(リンク⇨856日目の記事)』
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