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50年経ってからの同窓会って出席する必要ある?



Xさんが50周年の小学校の同窓会に参加した。長い年月を経ての再会は、懐かしさと不思議な気持ちの入り混じるものだったが、そんな感慨に浸る間もなく、彼女に近づいてきたのは小学校時代の合唱団の指揮者、Yさんだった。


「あの時、お前のピアノが速すぎて、指揮を合わせるのがどれだけ大変だったか!」彼は、まるで時計の針が止まっているかのように、50年前の出来事に強烈な思いを抱き続けていたのだ。挨拶も抜きに話し出すその勢いに、Xさんは一瞬呆気にとられたという。再会の最初の一言がそれか、と疑問が頭をよぎった。


久々の同窓会の場はどこか異様な空気に満ちていた。年を重ねていくと、人は言いたいことを包み隠さずに言うようになるのか、あるいは人生が限られてきたと悟るからだろうか。ひとりは自分の健康状態について延々と語り、また別のひとは、二十歳の頃からの恋愛遍歴を淡々と語り続ける。Xさんは、いつもは自分が話す側のはずだったのに、この夜はひたすら聞き手に回り、あっという間に2次会までの3時間が過ぎていった。


Xさんは、この50年の間にも30周年、40周年の同窓会に参加していたが、再会した同級生とはそれきりで、会が終われば誰とも連絡を取らなかったという。あまりにも自分と違う人生を歩んできた彼らに、彼はどこか距離を感じていたのかもしれない。


私自身、同窓会には複雑な思いがある。年を重ねた姿を見たいがための集まりに参加するのは、どこか動物園の檻越しに動物を眺めているような気分になりかねない。ありがたいことに、私にはいまだに中学時代の友人が数人、高校時代の友人も少し、大学時代の友人も10人程度、つながり続けている仲間がいる。日本に帰国すれば、そんな旧友たちとだけ顔を合わせ、静かなひとときを楽しむのがちょうどいい。


結局、Xさんはこの同窓会でたっぷり懲りたようで、もう二度と行くつもりはないと言っていた。それもまた、ひとつの選択肢だと思う。


文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から713日目を迎えた。(リンク⇨712日目の記事)』


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