インスタグラムやX(旧Twitter)への投稿が、若い世代の間で日常的になっているのは、今や当たり前の光景だ。だが、私のようなアラフィフ世代でさえ、気がつけばSNSを毎日欠かさずチェックし、時には自分の投稿を見直している。これが現代の「普通」なのかもしれない。
特に頻繁に投稿する人々は、承認欲求をどこかで感じていることが多い。私も例外ではない。自分が誰かに認められたい、共感されたいという気持ちで、日々投稿している。しかし、ふと気づいたのだが、承認欲求が強くなる時というのは、実は精神が安定している時期だ。元気で、生活が順調であると、他者からの評価を求める余裕が生まれるのだろう。
一方で、自分に不幸な出来事が起こり、心が疲弊してしまうと、その承認欲求すらどこかへ消えてしまう。例えば、ストレスから来る鬱状態や、複雑な人間関係が原因で気分が沈んでしまうと、何かを発信する気力すら湧かなくなる。そんな時、SNSの更新はもはや頭の片隅にすら残らない。
Xさんは、1日に5回もインスタを更新するような、いわゆる「インスタヘビーユーザー」だった。しかし、ある日突然、彼は全てのSNS活動を停止してしまった。理由を聞くと、30代の彼は失恋をし、そのショックで全く投稿する気が失せてしまったというのだ。承認欲求どころではなく、精神的なダメージを抱えた時、人はまず自分を守るために、他者との繋がりを遮断しがちだ。それは彼も例外ではなかった。
有名なフレーズに「ショー・マスト・ゴー・オン」という言葉がある。何があっても、舞台は続かなければならない、という意味だ。しかし、これはプロの舞台芸人や有名人ならば通用する言葉かもしれないが、一般人にとってはそう簡単なことではない。心が傷ついている時、SNSの投稿を続けることはまるで不可能に近い。
そうして私たちは、SNSと自分の心の状態との間で、日々葛藤しながら生活しているのだ。SNSの投稿が活発であれば、心は安定している。しかし、更新が途絶える時、その背後には、深い心の闇が隠れているのかもしれない。私たちは皆、そうした日常のささやかな綱渡りをしている。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から694日目を迎えた。(リンク⇨693日目の記事)』
最近の記事
おすすめの記事
Comments