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コロナでメンタルブレイク 4歳の犬が多い理由

Writer's picture: haruukjpharuukjp


犬を借りて散歩を始めてから三週間が経った。週に三度か四度、九十六歳の老人が飼う犬を連れ出して歩く。

そもそもこの犬がここにいるのは、四年前、コロナ禍のただ中でのことだった。その老人は孫のために犬を飼った。しかし、孫はもうこの世にはいない。犬が癒しになればと思ったらしいが、結局、そうはならなかった。人生というものは、たいていそんなふうに思いどおりにはいかないものだ。

ある日、その犬を連れてカフェに行くと、隣人がいた。よく顔を合わせるが、挨拶を交わす程度の関係だった。しかし、犬がいると、なぜか言葉が自然に出てくる。「何歳ですか?」と尋ねると、「四歳です」と彼は答えた。なるほど、コロナ禍で飼い始めたのか、と私は思った。そしてその理由を尋ねると、彼自身がメンタルを病んでいたからだと言う。

考えてみれば、あの頃、犬を飼い始めた人は多かった。ロックダウンが続くなか、犬の需要は急激に高まり、ペットショップでは価格が跳ね上がった。さらには、犬の誘拐事件まで頻発した。高価な犬が市場に溢れ、そしてそれがまた新たな悲劇を生んだ。

私が登録している犬の散歩サービスのサイトにも、四歳の犬がたくさんいる。コロナの時代、人々は犬を必要としていたのだ。犬は、あの閉ざされた日々のなかで、孤独や不安を少しでも和らげる存在だった。

犬と歩くと、今まで知らなかった道を知る。どんな天気であれ、外に出る理由ができる。見知らぬ人と言葉を交わすきっかけになる。何より、犬は余計なことを考えさせない。ただ「今ここ」を生きることを教えてくれる。

私たちはみんな、コロナという時代の影を背負っている。そして、それぞれのやり方で、その影と折り合いをつけようとしている。犬たちは、そんな私たちに寄り添い、黙って歩き続ける。

四歳の犬が多い。それは偶然ではない。そして彼らは今日も、無心に尻尾を振りながら、人間の心の傷をそっと舐めるように、私たちを癒してくれる。


文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から799日目を迎えた。(リンク⇨798日目の記事)』


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