ロンドンでは11歳から15歳の子供が「11-15 Zip Oyster photocard」を取得すると、バスやトラムを無料で利用できる。地下鉄や鉄道は子供料金が適用され、大人の半額で乗ることが可能だ。つまり、ロンドンの街は若者に対して寛容であり、彼らが自由に動き回れるように設計されているということだ。
娘がそのカードを申請したのは、ある寒い午後のことだった。そして一週間ほど経った頃、郵便受けに小さな封筒が届いた。開封すると、中にはプラスチック製のカードが一枚。表には彼女の顔写真が印刷され、これで娘は公式にロンドンの公共交通機関の一員となった。
子供が成長し、自分の力でどこかへ行けるようになるというのは、親にとって複雑な感情を伴う出来事だ。誇らしくもあり、少しばかりの寂しさも感じる。しかし、ルールとしては認められているのだから、親がどう思おうと、彼女はもうロンドンを自分の足で歩き、時にバスに乗り、あるいは地下鉄の長いエスカレーターを降りていくことになる。
ロンドンの移動システムの妙
一方で、ロンドンでは60歳以上の人々も特定の条件を満たせば、地下鉄を含む公共交通機関を無料または割引で利用できる。つまり、ロンドンは「若者」と「高齢者」に対して移動の自由を積極的に保証している都市なのだ。その姿勢は実に興味深い。
しかし、ロンドンの交通システムがすべての人に優しいわけではない。少なくとも車を運転する人間には厳しい。
ロンドンの中心部を車で走ると「渋滞税(Congestion Charge)」が適用される。
対象区域:ロンドン中心部
適用時間:月曜から金曜の午前7時から午後6時、週末の午後12時から午後6時
料金:1日あたり15ポンド
支払い方法:事前または当日の24時までに支払う必要あり
さらに「超低排出ゾーン(ULEZ)」も存在する。
対象区域:ロンドン全域(M25内すべて)
適用時間:年中無休24時間
料金:対象車両は1日あたり12.50ポンド
支払い期限:走行後3日目の午前0時まで
つまり、ロンドンは「歩く人々に優しく、車に乗る人には冷たい街」なのだ。
ロンドンの中で歩くということ
こうして娘がロンドンの街を自分の足で歩くようになった。たまに、彼女が地下鉄の改札をスムーズに通り抜けていく姿を見る。そこには、親の助けを必要としない、新しい自立した彼女がいる。
街はそういう成長を促す場所だ。バスの座席に腰掛け、イヤホンをつけながら窓の外をぼんやりと眺める。地下鉄の構内で、どのホームに向かえばいいのか迷う。信号待ちの時間が少し長く感じられる。そういう小さな経験の積み重ねが、都市を知り、自分の居場所を見つけることにつながるのだろう。
ロンドンは、歩くことで見えてくる街である。そして、うまく利用すれば、実に快適に暮らせる場所でもある。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から796日目を迎えた。(リンク⇨795日目の記事)』
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