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クリスマスケーキとお節料理、同時に予約 盛り上がる日本の年末



11月に入り、ロンドンの気温はぐっと下がった。空気が冷たくなるにつれ、街中ではクリスマスのイルミネーションが灯り始め、静かだった街が一気に年末モードにシフトするのを感じる。


ロンドンのこの変化はどこか劇的だ。まるで舞台が切り替わるように、11月の終わりから12月にかけてのこの時期、空気の匂いすら少し変わる気がする。日本でも同じように年末への準備が進んでいるだろう。ただ、その過程は少しだけ違う。


日本では、年末年始の準備はクリスマスを含んだ通過儀礼のようなものだ。お正月が主役で、クリスマスはあくまでその前座として機能している。もちろん、西欧文化の影響を受けた華やかさはある。近年では生のもみの木がスウェーデンの家具屋で売られるようになり、少しずつ「本物志向」のクリスマスが浸透している。けれど、その根底には宗教的な意味合いは薄い。ただ「楽しいイベント」としてのクリスマスだ。


そして、その「楽しいイベント」が終わると、すぐに日本の伝統的な年末が待っている。


最近、日本では興味深い風習が広がりつつある。クリスマスケーキとお正月のお節料理を同時に予約できるサービスだ。これもまた、忙しい現代社会の中で効率を重視した結果の文化なのかもしれない。だが、それ以上に感じるのは、日本人が食文化を通して季節や行事を楽しむことへの強いこだわりだ。


クリスマスケーキにはフルーツとクリームがたっぷりと載り、お正月のお節には黒豆や伊達巻、数の子が美しく並ぶ。どちらも「食べること」で人々を楽しませ、結びつける。この食への意識は、イギリスの食文化とは対照的だ。産業革命以降、イギリスは食を単なる栄養摂取の手段とする傾向が強く、日本のように「楽しむ」ための工夫には欠けていると感じることが多い。


ロンドンのクリスマスは確かに美しい。煌めくイルミネーション、街角のクリスマスマーケット、そして伝統的なミンスパイの香り。しかし、そこに宗教や家族との深い結びつきがある一方で、日本の年末のような「祭りの連続性」はない。


日本では、クリスマスが終わるとすぐにお正月に向けた準備が始まり、年末はその勢いで駆け抜けていく。人々が忙しそうに動き回る中で、街が活気に満ちていく様子は、本当に特別だ。


私たちはどこに住んでいても、年末になるとその土地ならではの文化に触れる。それは、私たちを取り巻く世界の豊かさを教えてくれるものだ。ロンドンの冷たい空気と煌めくライトを楽しみながら、日本の年末の活気に思いを馳せる。それが、私の冬のささやかな楽しみの一つである。



文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から729日目を迎えた。(リンク⇨728日目の記事)』


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