
インドとイギリスの歴史、そして今
1947年8月15日、インドはイギリスから独立した。それから75年が経過した2022年、イギリスではインド系ヒンドゥー教徒のリシ・スナク首相が誕生した。かつての植民地からの移民の子孫がイギリスのリーダーとなった瞬間である。
しかし、スナク政権は保守党の「厳格な移民政策」を掲げており、「移民の子孫である首相が移民制限を推進する」ことには賛否が分かれる。なぜスナク首相は移民の受け入れに慎重なのか。これはイギリス国内だけでなく、インド本国の動向とも深く関係している。
ロンドンでは、すでにインド人の不動産所有数がイギリス人を上回るとも言われている。この急増するインド系移民たちはどのような背景を持つのか。その実態を知るために、実際にインドを訪れたレポート動画をまとめてみた。
インドとはどんな国か?
日本人がインドを訪れると、10人中9人が「もう二度と行かない」と言う。しかし、10人に1人はインドの魅力に取り憑かれ、何度も訪れるようになるという。
インドの国土は広大で、その面積はイギリスの13.5倍、日本の8.7倍に及ぶ。世界で7番目の広さを誇り、人口は2025年時点で約14億人と世界最多。つまり、世界の5〜6人に1人はインド人ということになる。
イギリスとインドの関係
18世紀から19世紀にかけて、イギリスはインドを植民地として支配し、現地の人々を低賃金で働かせ、高い税を課した。その支配に抗い、マハトマ・ガンジーによる独立運動が展開され、ついに1947年にインドは独立を果たした。
多様な言語と文化
インドでは公用語のヒンディー語を話す人は約5億人にとどまり、残る9億人は異なる言語を話す。国内には約260種類の言語が存在し、統一された言語環境ではない。そのため、英語が事実上の共通語になりつつあるものの、英語を読み書きできるのは富裕層や高学歴層の2〜3億人に限られ、約10億人は地元の言語しか話せない。
経済格差と生活環境
インドの人口の約半数である8億人が農業を生業としているが、経済格差は深刻だ。識字率は75%程度で、約3億5000万人は文字の読み書きができない。平均年収は約180万円だが、66%にあたる9億人は年収65万円以下で生活している。さらに、約1億7000万人が1日250円以下で暮らす超貧困層に分類される。
インドの社会制度と宗教
インドでは、約80%の人々がヒンドゥー教を信仰しており、古くから続くカースト制度が社会に根付いている。この制度では生まれた瞬間に身分が決まり、生涯にわたってそれを覆すことが難しい。貧困層に生まれた場合、どれだけ努力しても経済的な向上は容易ではない。
インドの伝統と衣服
街でターバンを巻いている人を見かけることがあるが、これはシーク教徒の男性であり、インドの人口の約1.7%に過ぎない。インドでは2000年以上前から織物文化が盛んであり、女性は伝統的なサリーを着る。男性は現代ではシャツやズボンを着用することが多いが、正式な場ではクルタパジャマという伝統衣装を身につける。実は「パジャマ」という言葉の語源はこのクルタパジャマに由来し、イギリス人がこれを寝間着として着用し始めたことから広まった。インドでは、パジャマ姿のまま公式の場や冠婚葬祭にも出席するのが一般的だ。
インド人とカレー
インドでは毎日カレーを食べると言われるが、「カレー」という言葉の意味が日本とは異なる。インドでは「カレー」とは「おかず」の総称であり、スパイスを使った煮込み料理全般を指す。そのため、インド人に「カレーを食べるのか?」と聞くと、「何のカレーのこと?」と逆に質問されることが多い。
まとめ
インドは多様性に満ちた国であり、イギリスとの歴史的関係や急成長する経済、深刻な貧富の格差など、さまざまな側面を持っている。インド人移民の増加がイギリス社会に与える影響を理解するためには、こうした背景を知ることが重要だ。
まだまだ伝えきれないインドの魅力や課題について、次回の記事でさらに掘り下げていきたい。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から849日目を迎えた。(リンク⇨848日目の記事)』
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