喧噪と静寂の狭間で見つけたもの
イングランドとウェールズでは、総人口6100万人のうち、単身者の数は約2900万人にのぼり、既婚者の2400万人を大きく上回っている。日本でも、単身者はおよそ5000万人。2023年の統計によれば、生涯未婚率は男性で28%、女性で18%と、過去最高に達しているという。これは、つまり人生の大半をひとりで歩んでいく人たちが年々増えているということだ。
私は既婚者で、妻と子供たちがいる。自分でも、彼らと過ごす時間を大切に思っているし、それが私の人生の大きな軸になっていると感じている。けれど、単身者の生活には、その人なりの自由があり、豊かな時間の流れもあるのだろう。独身でいることの良さについて、私はよく耳にするし、少なからず興味もある。
ちょうど、私の妻と子供たちは一週間ほど帰省していて、私はひとりこの家で生活をしていた。そして、今日ようやく彼らが帰ってくる。家に誰もいないというのは、どうしてこんなに心細いのだろう。外から戻ってきても、静まり返った部屋にはただ猫だけがいる。話しかけても、猫は「ミャー」としか答えない。できることなら、もっとはっきりとした返事をもらいたいものだ。
この一週間で思ったのは、私がもし生涯独身であったら、きっとこうして独り言を言うことが増えて、時々寂しさが心に染みてしまうのではないかということだ。単身でいることに喜びを見出せる人は、きっと自分の好きなことや目標がはっきりしていて、それに一人で没頭できる才能がある人なのだろう。自分に向き合い、ただ一人で何かに集中し、時間が過ぎていくのも気にならない。そんな人の人生には深い味わいがあるのだろうと想像する。
けれど、私にはそれが難しい。いつも誰かと一緒に時間を分かち合うことにこそ喜びを見出しているからだ。そして、家族が帰ってくれば、またあの賑やかで忙しい日常が戻ってくる。だけど、それこそが私にとっての生き甲斐なのだと気づいた。
この独りの生活は、私にとって静かで特別な時間だった。けれど、私に必要なのはやはり、この家族のもたらす喧噪と、その先にある充実感なのだと思う。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から707日目を迎えた。(リンク⇨706日目の記事)』
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