
Xさんは半年前から、娘さんの卒業旅行の準備に余念がなかった。イギリス観光のハイライトを綿密に計画し、ストーンヘンジ、ウィンザー城、そして『ハリー・ポッター』の聖地巡礼まで組み込んだ。ロンドン市内ではロンドンアイやマダム・タッソー館など、娘さんが喜びそうなものを次々とリストに加えていった。
すべてが順調に進んでいるように思えた。しかし、Xさんの仕事が立て込み、気がつけばハリー・ポッター・スタジオツアーのチケットを確保し忘れていた。ふと気づいたのは出発の1ヶ月前。慌ててオンラインで探したが、3月の第1週のチケットはすでに完売していた。
ネットの隅々まで検索し、旅行会社にも相談したが、「もし空きが出れば前日までに連絡する」との曖昧な返答しか得られなかった。そして昨晩、ついにその連絡が届いた。「申し訳ありませんが、チケットは確保できませんでした。」
娘さんの落胆した顔を想像すると、Xさんの胸は締めつけられた。ここまで完璧に計画してきたのに、最後の最後で肝心な部分が抜け落ちてしまうとは。
そこでXさんは私に相談してきた。
私は公式サイトを再確認した。すると、午後の遅い時間にわずかだが当日券が残っていた。大人1枚、子供1枚。まるで最後の魔法のように、それはそこにあった。
すぐにXさんに連絡すると、「本当に?!」と歓喜の声が返ってきた。娘さんも、魔法の世界に入る直前のホグワーツ生のように目を輝かせた。
こうして親子はハリー・ポッター・スタジオへと向かい、夢の時間を過ごした。帰りにはお土産をたくさん抱え、娘さんの笑顔は終始絶えなかった。
Xさんは私に深く感謝した。私がしたことは、ただチケットを探しただけなのだけれど。
教訓:ハリー・ポッター・スタジオのチケットは完売でも、当日券が出ることがある。最後まで諦めずにチェックしてみること。魔法は、時にギリギリでやってくる。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から828日目を迎えた。(リンク⇨827日目の記事)』
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