
娘の合唱コンクールが開かれた。会場は盛大に借りた歴史あるホール。10の学校からそれぞれ20〜30人の生徒が集まり、その親たちが夫婦で見に来るものだから、客席はほぼ満席となる。2年に1度のイベントで、地域でもそれなりに注目されるものだ。
ただし、我が家にとっては、これは単なる2年に1度の行事ではなく、特別な意味を持っていた。小学校を卒業する娘にとって、これが最後の合唱コンクールだったのだ。
子どもが成長する中で、「これが最後になる」という出来事は、意識しなければ気づかないうちに過ぎてしまうことが多い。ランドセルを背負って登校する後ろ姿を見送るのも最後の日があるし、親と手をつないで歩くことも、ある日を境にふと終わってしまう。けれど、今日の合唱コンクールは、その「最後」であることがはっきりとわかる数少ない機会だった。だからこそ、心に留めておきたいと思った。
おそらく10年もしないうちに、子どもたちは家を出ていく。私もかつてそうだったように。親離れは思いのほか早い。そしてそのときになって「あのとき、もっとしっかり見ておけばよかった」と思っても遅いのだ。
長男のときは、まだ下の娘がいたことで、「子ども時代のイベントはまだ続く」とどこかで安心していた。それが気の緩みになり、今しかない瞬間を意識せずに見過ごしてしまったことに、今さらながら申し訳なさを感じる。
けれど、長男にもまだこれから「子ども時代の達成」がいくつもあるだろう。その一つひとつを今度こそ、きちんと見届けたいと思う。
子どもが成長していくことは嬉しいことだ。でも、それは同時に、親としての役割が少しずつ終わっていくことでもある。だからこそ、今日のような節目の瞬間を、大切に受け止めていきたい。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から847日目を迎えた。(リンク⇨846日目の記事)』
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