夫婦生活が長くなると、相手のことを知り尽くしている気がするものだ。言葉を交わさなくても、その仕草や表情だけで相手の気持ちを察することができる。だけど、本当にそうだろうか?
意外と、改めて質問を投げかけてみると、新しい発見があるものだ。
今年、私たちの結婚生活は節目を迎えた。その記念に、クリスマスプレゼントとしてあるカードゲームを手に入れた。「カップルへの質問」というタイトルがついた、シンプルだけど興味深いゲームだ。一枚一枚のカードに書かれた質問をもとに、お互いの答えを共有する。
例えば、こんな質問があった。「最近1万円以下で買ったもので、生活を大きく変えたものは何?」「亡くなるまでに一度は行ってみたい3つの場所は?」「相手がとても嫌がるが、自分は好きなことは?」そして、「好きな天気は?」
この「好きな天気」の質問が、特に印象に残った。
晴れよりも雨を選ぶ理由
私は晴れの日が好きだと思っていた。普通に考えればそうだろう。けれど、口を開いたとき、自分でも意外な答えが出てきた。「雨が好きだ」と言っていたのだ。
理由は単純だ。晴れた日にオフィスのデスクで窓の外を眺めていると、私はどこか落ち着かない気持ちになる。まるで、その晴天を楽しむ自由を奪われているように感じるからだ。それに比べると、雨の日には妙な安堵感がある。
もちろん、雨に濡れて歩くのが好きというわけではない。でも、しっかりとした防寒具を身につけたり、傘をさして歩くのはそれほど嫌ではない。むしろ、雨の日の建物の中で、しとしと降る雨音を聞きながら外を眺めると、不思議と落ち着く。
この答えを聞いた妻は、しばらく考え込んでから小さく頷いた。そしてこう言った。「私も、オフィスに缶詰になっている時に晴れていると、同じように感じることがある」と。
質問が繋ぐ対話の力
このカードゲームをしてみて思ったのは、私たちは相手のことをすべて知っているつもりでも、実際にはそうでもないということだ。夫婦生活の中で、無意識のうちに相手のパターンを決めつけている。でも、その枠を少し壊してみると、まだ知らない一面が顔を出す。
雨の日が好きだという私の意外な答えを通じて、妻との会話はいつもより深く、そして豊かになったように感じた。この小さな気づきが、私たちの関係をさらに強くしてくれる。
絆を深めるために
夫婦関係というのは、不思議なものだ。長く一緒にいればいるほど、わかったつもりで通り過ぎてしまうことが増える。でも時には、こうしたカードゲームのような小さなきっかけが、新しい風を吹き込むこともある。
この「カップルへの質問」というカードゲームのおかげで、私たち夫婦の間に新しい絆が生まれた。そしてそれは、雨の日のようにしっとりと心地よいものだった。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から770日目を迎えた。(リンク⇨769日目の記事)』
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