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悪化する治安 家の前で車が炎上

Writer: haruukjpharuukjp


家を買うということは、その土地とのある種の契約を交わすようなものだ。今ではインターネットのおかげで、家を買う前にその地域の治安や過去に報告された事件の種類を調べることができる。例えば、「チェックマイストリート」というサイトを使えば、郵便番号を入力するだけでその地域の犯罪状況が見られる。現代の家探しは、かつてのように単に「雰囲気」で決めるのではなく、数値やデータと向き合いながら進んでいく。


私が住むエリアは、ロンドン市内で家を購入するには高価すぎたため、郊外に家を求めた結果たどり着いた場所だ。ロンドンからの程よい距離にあり、20年ほどの間に住人の多くにとっても便利で居心地の良いエリアとなった。もともとは引退後のイギリス人たちが静かに暮らすような場所だったが、いつの間にか移民のファミリーも増え、様々なバックグラウンドを持つ人々がこの町で新しい生活を始めている。そして、多様性が増すにつれて、時折警察沙汰になるような騒ぎも見られるようになってきた。


私がこのエリアに住み始めたのは、比較的安全だと評されていたからだ。だが、20年という年月は街の雰囲気を少しずつ変える。ある夜遅く、どんよりとした空気を破るような大きな爆発音が聞こえた。驚いて外を見ると、道路に停められた車が燃え上がり、激しく炎を上げている。さらに1分も経たないうちに、再び爆発が起こり、火の勢いが増してガソリンに引火したことがはっきりわかった。


近隣の住民がすぐに消防車を呼び、7分ほどで消防隊が到着したが、その間にも事情を知らない車がいくつもその道を通ろうとした。そして炎に気づいた車が急いでバックで引き返す様子が、妙に現実感を伴って目の前に広がっていた。消防隊が水を大量に浴びせ、数秒のうちに火は静かに鎮火された。焼け焦げた車が煙を上げながら、静まり返った住宅街に取り残されている様子は、奇妙なまでに平穏だった。


その車が盗難車だったのか、あるいはドラッグディーラーの手に渡ったものだったのか、真相はわからない。普段は見かけないナンバーの車だったというだけのことだが、その車の存在だけで、このエリアに漂っていた「安全な住宅街」の空気は崩れ去ってしまった。


家の価値が下がるかもしれない。子どもたちが通学路で安全に過ごせるよう、親たちはもっと厳重な配慮を迫られることになる。ふと気づけば、穏やかだったはずの場所が、もうかつての場所ではなくなっていた。


文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から723 日目を迎えた。(リンク⇨722日目の記事)』


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