犬と戯れたいと長い間思ってきた。だが、飼うとなると話は別だ。私にはその責任を全うできる自信がない。毎日の散歩は大変だし、旅行の自由も失われてしまう。それでも、犬を連れて散歩をするという夢は捨てきれなかった。それは健康的で、犬にとっても自分にとっても良いことだと思えたからだ。
犬を借りるという選択
そんな思いから、私は「犬を散歩させたい人向け」のサイトに登録してみた。犬を飼うことはできないが、散歩だけならできるという人たちが利用する仕組みだ。だが、期待していたオファーはなかなか来なかった。
そんな中、近所の友人から興味深い話を聞いた。90歳になる老人が飼っている犬が、老人自身の足腰の衰えで散歩に行けなくなり、家の中で運動不足になっているというのだ。
「それなら、ぜひ散歩させていただきたい」と私はすぐに申し出た。老人はその提案に喜び、犬を私に預けてくれることになった。
出会いと初散歩
犬の名前はジャック。雑種で、茶色い小柄な犬だ。ただ、少し小太りで、運動不足が一目でわかる。早速、私はジャックを連れて森へと散歩に出かけた。
話によると、このジャックは「逃亡癖」のある犬だという。家のドアをうっかり開けておくと、弾丸のように飛び出し、なかなか戻ってこないらしい。だから、初対面の私とはしっかりリードをつけて歩くことになった。
ジャックのペース
ジャックは初めての散歩相手である私の様子をよく観察しているようだった。リードを引っ張ることもなく、私の歩速に合わせて穏やかに歩いてくれる。時折振り返って私の表情を窺う仕草は、まるで「これでいいですか?」と確認しているようだった。
おそらくジャックは賢いのだろう。自分が余計なことをして散歩の機会を失うのを恐れているようにも見えた。人間の都合を察知しながら行動する犬。そんな気の利く相手との時間は、私にとっても心地よいものだった。
散歩がもたらすもの
ジャックとの散歩が日常に加わったことで、私は自然の中でのリフレッシュを得た。一方で、ジャックも運動不足の解消に役立てている。これで彼の小太りも少しは改善されるだろう。
私はしばらくこの関係を続けるつもりだ。ジャックとの散歩は、責任感と自由のちょうど良いバランスを保ちながら、自分にとっても豊かな時間を提供してくれている。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から774日目を迎えた。(リンク⇨773日目の記事)』
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