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サラリーマン時代、私は上司の評価ばかりを気にして働いていた。何か良いことをしたからといって必ずしも褒められるわけではないし、むしろ褒められることよりも給料が上がることのほうが重要だった。そういう価値観の中で生きていた。
しかし、会社を辞めてアテンドの仕事をするようになってから、仕事の意味は大きく変わった。お客様に直接接し、その時間をいかに心地よいものにするか。それが私の新しい仕事の本質だった。
人と人とのコミュニケーションがすべてを決める仕事だ。私は自分の能力を総動員して、ヨーロッパに旅行に来たお客様の貴重な時間をより充実したものにする。ただ、それだけに集中する。
誰かのために働くというのは、上司のために働くのとはまったく違うものだ。お客様は私のサービスに感謝し、その気持ちをフィードバックとして残してくれる。そして、その言葉を読むとき、私は何とも言えない幸福感に包まれる。サラリーマン時代には決して味わえなかった感覚だ。
たとえば、こんなフィードバックがある。
「運転ガイドさんはいろいろいらっしゃるかもしれませんが、今回は大変よかったです。日本語で聞くガイドは大満足でした。道中も日本の出身地の話や、現在のイギリスでの生活など、いろいろなことを聞けて楽しい1日でした。」
あるいは、こんな言葉もある。
「シニア女性一人旅でしたが、お手洗いも気に掛けて頂き、助かりました。最新ロンドン情報も教えて頂けます。他の方も書いておられましたが、安心して全てを任せられるお人柄でした。」
こういった言葉が、自分の仕事に対する自信につながる。そして、もっと良いサービスを提供しようというモチベーションになる。
「ありがとう」と言われる仕事。それは本当に素晴らしいものだ。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から812日目を迎えた。(リンク⇨811日目の記事)』
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